新しい鼓膜穿孔閉鎖術(ASET)

鼓膜穿孔閉鎖術とは?

鼓膜に穴が開いてしまう病気としては、慢性中耳炎や鼓膜の外傷などがあります。自然に閉じる場合もあるのですが、鼓膜に穴が開いたままですと,ここから細菌が中耳へと侵入して耳だれが出やすくなったり、聞こえが悪くなったりします。
鼓膜の穴を閉じる方法として以前から行われていたのは、鼓室形成術や鼓膜形成術ですが、入院が必要であり、骨を削ったり筋膜を採取したりしなければならず、なかなか気軽に受けるというものではありませんでした。
入院や皮膚切開の必要のない方法としては、鼓膜穿孔閉鎖術という方法が従来よりありました。これは鼓膜に開いた穴を、特殊な素材のシートで鼓膜を覆うことにより、これを足場として鼓膜が再生していくという仕組みです。しかし、手軽な分、成功率があまり良くありませんでした。
当院では新しい鼓膜穿孔閉鎖術として、自己血清とキチン膜を併用した自己血清点耳療法(autologous serum ear drops therapy: ASET) を行っています。これにより、安全でなおかつ比較的確実な鼓膜穿孔閉鎖術が可能となりました。

治療の実際

  1. 耳の中に綿球を入れて局所麻酔をします。
  2. 採血をします。(血液は遠心分離器にかけて、血清を分離します。)
  3. 穿孔の辺縁に綿棒で硝酸銀を塗布します。(これにより傷を新鮮化して、新しい鼓膜の細胞が伸びていくことを促します。 )硝酸銀の塗布
  4. ベスキチンシートで穿孔を覆います。
    鼓膜の細胞が伸びていくための足場となります。
  5. 自己血清と抗菌剤の混合液の点耳をします。
    点耳 血清には、鼓膜が再生していくための成長因子が含まれており、穿孔辺縁から細胞が伸びる時の栄養源となります。
    自分の血清ですから、アレルギーなどの心配などがなく安全です。

自宅では?

点耳液をお渡ししますので、1日3〜4回
一滴ずつ、点耳をして下さい。
また、キチン膜がずれないように以下の注意は必要です。

  • 鼻を極力かまないこと。かむ場合は軽く、片側ずつ交互に。
  • 鼻すすりはしないこと。
  • くしゃみは極力しないこと。
  • 水泳はしないこと。
  • その他、耳の中に水を入れないこと
  • 治療後の通院は? 

    週に一度ずつ通って頂いて、キチン膜のずれがあれば、初回同様硝酸銀の塗布とキチン膜の貼布を行います。点耳液は2週に一度ぐらいの間隔で作り直しますが、この際、採血が必要です。
    鼓膜の孔が塞がるまでの期間は、平均で2ヶ月程度です。