耳鼻咽喉科(いわゆる耳鼻科)では、耳、鼻、咽喉頭(のど)の疾患はもちろんのこと、顔面や頸部の疾患も診療の対象となりますから、意外と守備範囲が広いのです。その中でも主だった疾患を解説いたしましたが、単なる教科書的事項の羅列ではなく、トピックスや実際診療していての問題点なども記載するようにしました。ただし、スペースも限られていますので、重要事項のみにとどめ、さらに詳細な解説が必要と思われる疾患については、別ウインドウが開くようリンクを設置いたしました。
解説を見るには、まず興味を持った疾患名をクリックしてみて下さい。

耳の疾患

急性耳血腫・慢性耳血腫

 耳血腫(じけっしゅ)とは耳介(じかい)の軟骨と皮下組織の間に血が溜まった状態です。柔道、レスリング、相撲、ラグビーなど、頭部の擦れるスポーツが原因となることが多く、単に内出血により血液が溜まっている状態を急性耳血腫、急性血腫を繰り返すことにより耳介の皮下組織に繊維化が起こり、全体的に耳がごつごつと硬くなった状態を慢性耳血腫といいます。
 急性耳血腫は、穿刺吸引(注射器で内容液を抜くこと)で一旦は良くなりますが、再発しやすく、根本的治療と患部の安静が必要となります。再発を防ぐためには、皮膚の下に血液が貯まらないようにする開窓術と圧迫固定が行われてきました。しかし最近では患部にメスを入れずに、腫れた耳介にピシバニールという薬物を注入するだけ、という硬化療法が有効であることが分かってきました。硬化療法のメリットは、「切開などの観血操作が不要なこと」、「圧迫固定が不要であること」、「治療後の処置は不要であること」、「再発が少ないこと」などがあり、今後は手術に替わって主流になると思われます。
 慢性になるとなかなか有効な治療法がないので、急性のうちに治療することが重要です。

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外耳炎・急性外耳道炎

 外耳孔(いわゆる耳の穴)から鼓膜に至るトンネル状の部分が外耳道(がいじどう)です。急性外耳道炎の原因は耳かきのしすぎがほとんど。耳掃除により皮膚に細かい傷ができて、そこから細菌感染が起こり、耳の痒みや痛み、耳漏(耳だれ)、耳閉感(耳のつまる感じ)などの症状を起こします。 ひどくなる前に耳掃除を止めることができれば自然治癒しますが、大抵は耳掃除が習慣化しているので、なかなか止められず悪化してしまうケースが多いようです。耳搔き
 治療は耳掃除をしないこと、耳に水を入れないことなどの日常の注意が大事です。 痛みが強い場合は耳鼻科での治療が必要で、抗菌剤の内服処方や点耳(耳のなかに薬液を垂らす治療)などが必要になります。

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耳垢栓塞

耳垢栓塞(じこう)とは耳垢が外耳道につまった状態です。

通常、鼓膜表面でできた耳垢は勝手に手前へと移動し、無意識のうちに耳の穴から落下していますが、耳垢の移動の働きが悪い場合や、湿型耳垢(いわゆる”あめ耳”)の場合は耳垢が溜まりやすくなります。耳掃除も細めの綿棒などで耳垢を掻き出すように行えばよいのですが、逆に押し込んでしまうと奥へ溜まってしまうことがあります。
ほとんどが無症状なのですが、多量に溜まると耳閉感(耳のつまった感じ)や難聴の原因となります。
学校健診などでは、無症状なのにこの病名で耳鼻科受診を勧められることがありますが、その場合は耳垢が邪魔をして鼓膜の状態が確認できなかったことも意味しますので、やはり耳鼻科を受診して耳垢を除去してもらい、改めて鼓膜の状態も確認してもらった方が良いです。

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外耳道真菌症

 真菌とはカビのことです。通常の外耳道炎は細菌が原因ですが、時にカビが原因のことがあり外耳道真菌症といいます。
 細菌性の急性外耳道炎と同様に耳のいじりすぎ、掃除のしすぎにより、傷ついた外耳道の皮膚から真菌が侵入して生じます。症状は耳の痒み、痛み、耳漏、耳閉感などですが、比較的痒みの強い傾向があります。
 外耳道真菌症に適応のある内服の抗真菌剤はないので、耳鼻科で外耳道を丁寧に清掃してもらい、消毒、抗真菌剤(軟膏、クリームなど)の塗布などを受ける必要があります。カビはしつこく、一度の治療で全て死滅させることは不可能で、残ったものから再び増殖するので、頻回かつこまめな通院が必要です。

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外耳道異物

 耳の中に、何かしらの異物が入った状態。子供ではおもちゃのピストルの弾やビーズ玉など、大人では綿棒の先端などが多いです。また意外なものでは自分自身の髪の毛。鼓膜に髪の毛が当たっていると、耳の違和感や耳閉感(耳のつまる感じ)が起こります。
 またちょっと厄介な外耳道異物としては、昆虫の侵入があります。外耳道内で昆虫が暴れると、外耳道が傷ついてしまうため、外耳道炎を併発して痛みが強ります。
 治療はとにかく外耳道を傷つけないように異物を取り除くしかないので、自分で取ろうとあまり深追いせずに、早めに耳鼻科を受診するのが得策。

 単純な異物は摘出すれば治療は完了しますが、外耳道炎を併発してしまった場合は、抗生剤、鎮痛剤、耳浴などによる治療も必要です。

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外傷性鼓膜穿孔

 物理的な外力で、鼓膜が破れた状態。誤って耳かきなどで直接鼓膜を突っついて起こることが多いのですが、意外なところでは、耳に平手打ちを食らって、強い気圧がかかって鼓膜が破れてしまうこともあります。
 鼓膜が破れたからといって、全然聞こえなくなるということはありませんが、鼓膜に開いた穴の大きさに応じて様々な程度の難聴が生じます。鼓膜には再生能力がありますので、開いた穴が小さければ数日程度で治癒します。ただし、残った鼓膜や中耳に感染を起こすと耳漏(じろう;耳だれ)が出て、鼓膜が再生しにくくなってしまいますので、感染の予防が肝心です。具体的には耳に水を入れないように気を付けることと、抗生剤を飲むことなどです。
 不幸にも鼓膜の大部分が損傷した場合などは穿孔が閉じなくなることもあり、その場合は、鼓膜形成術といって筋膜などを使って鼓膜を張り替える手術が必要です。手術は日帰りで可能な場合と、数日間の入院を要することもあります。
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急性中耳炎

もともと小児には非常に多い疾患ですが、最近特に、保育所などで集団保育をうけている子供での、低年齢化と難治化が問題となっています。0歳から2歳で急性中耳炎にかかるのは、ほとんどが集団保育を受けている子ですが、それは免疫機能が充分に成熟しない、細菌に対して無防備な状態のうちから、保育所という色々な細菌の蔓延しやすい環境に曝されることが原因となっています。子供の年齢が低いほど、中耳炎の起因菌が耐性菌である割合が非常に高くなることも、難治化,遷延化の原因となっています。0〜2歳で保育所に入っている子で中耳炎がなかなか治らない場合は、できれば一定期間家庭に戻すのが一番効果的な治療法となりますが、家庭の事情でそうも行かないことがほとんどであり、医学的のみならず社会的な問題も含んでいます。
急性中耳炎は急性上気道炎(いわゆる風邪)に合併して起こることがほとんどで、子供に多いので小児科で風邪と一緒に治療されることも多のですが、耳鼻科との間で治療方針が食い違うこともあり,これはこれで大きな問題を含んでいます。急性中耳炎

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滲出性中耳炎

鼓室に粘液が貯まった結果,鼓膜が振動しにくくなり、音のエネルギーが内耳まできちんと伝わらず、耳閉感(耳のつまる感じ)、難聴が起こります。原因は耳管機能障害で、アデノイド、副鼻腔炎、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎などに続発、あるいは合併します。

滲出液貯留

急性中耳炎と並んで幼児に多い中耳炎ですが、急性中耳炎と違って痛みはないので、見逃されていることも多いようです。3〜5歳程度のお子さんで、「呼んでも気がつかない。」、「聞き返しをする。」などの症状があれば、滲出性中耳炎の可能性が高くなります。この年代では自分から異常を訴えることはほとんどなく,家族も気づかないことも結構あります。この年頃に両側の難聴があると、言葉を覚えるのが苦手になったり、他の子供や周りの大人とコミュニケーションを取るのが苦手になったりするので要注意です。
3歳児健診や学校健診などで初めて指摘されることも多いが、自己判断で「何も症状がなさそうだから・・・」と見過ごすことなく、耳鼻科に連れて行くべきです。
診断は鼓膜所見、聴力検査ティンパノメトリーにて比較的容易につきます。治療は副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎があればまずはその治療を行いますが、鼓室内の滲出液が減らずに聴力の改善もない場合は、鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置(チュービング)という治療が行われます。また、アデノイド切除術が有効な場合も多くあります。

チュービング

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好酸球性中耳炎

好酸球性中耳炎は約10年前から報告されるようになった、比較的新しい中耳炎の一つのタイプです。鼓室内に粘液が貯まり難聴や耳閉感を来す中耳炎で、滲出性中耳炎に非常に似ていますが、滲出性中耳炎が子供に多いのに対して、当疾患は30〜50代の大人で、もともと喘息を持っている方がほとんど。また副鼻腔炎の合併も多いのですが、普通の風邪に続発する副鼻腔炎ではなく、副鼻腔粘膜に好酸球が悪さをして炎症を起こす、好酸球性副鼻腔炎を伴います。

好酸球性中耳炎では中耳粘膜に好酸球が浸潤することにより、中耳粘膜がブヨブヨに腫れて、ひどくなると鼓室内に充満します。またピーナッツバターのようなネバネバした粘液(ムチン)が貯まるので、鼓膜が持ち上がってくることもあります。

従来知られていた単純な慢性中耳炎や滲出性中耳炎では、伝音性難聴が主体であり治療により聴力は改善することが多いですが、好酸球性中耳炎では早期から内耳障害も併発し、感音難聴を起こすこともあり、この場合は例え中耳の状態が良くなっても難聴が治りにくくなります。

耳管通気法や中耳根本術などは、当疾患に対しては無効であるばかりか、難聴進行の誘因となることもあり、注意が必要です。

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慢性中耳炎

急性中耳炎が遷延化して慢性中耳炎になります。急性中耳炎では鼓室内に溜まった膿が鼓膜を破って流れ出しますが、炎症が治まれば鼓膜に開いた孔は自然に塞がります。ところが、中耳炎を繰り返すことにより中耳粘膜が機能不全に陥り、耳漏(じろう;耳だれともいう)が持続したり、鼓膜に穴がいたままになるのです。また耳小骨が炎症により溶けたり、動きが悪くなったりしますので、その結果難聴となってしまいます。初期には伝音性難聴であり手術により鼓膜を張り替えたり、耳小骨を再建したりすることにより、聴力の改善の見込めるケースも多いのですが、時間が経つと徐々に内耳障害も生じてくるので、混合性難聴となり手術による聴力改善も難しくなってきます。
高齢者にはまだまだ多く見受けられる疾患ですが、若年者ほど少なくなってきています。それは育った環境が衛生的になってきていること、急性中耳炎が抗生剤などによって適切に治療されていることによると考えられます。

→慢性中耳炎のオージオグラムの例

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真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎は、鼓室内で角質が増殖するために耳小骨が破壊され難聴を来します。半規管を角質の固まりである真珠腫が圧迫したり、直接破壊したりするとめまいがが生じます。また顔面神経麻痺を生じることもあるので、単純な慢性中耳炎よりもたちが悪い中耳炎といえます。
先天性のものもありますが、滲出性中耳炎から癒着性中耳炎を経て、真珠腫生中耳炎へと段階的に進行するケースが多いです。単純な慢性中耳炎と区別の付きにくいこともあり、その場合は手術所見で最終診断を下すこととなります。手術では真珠腫を取り残すと再発するので、真珠腫を全摘することが最優先とされ、聴力の改善については後回しにならざる終えないこともあります。一回目には耳小骨も含めて真珠腫を全摘して、一定期間が経ってから二度目の手術を行い、真珠腫の再発がないか確認した上で耳小骨を再建して聴力改善を目指すことも多いです。

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耳管開放症

原因

耳管とは 、鼓室から上咽頭へとつながる通気口で、外耳道側の気圧と鼓室内の気圧を同じに保つため調整する働き、また鼓室の換気という役割をしています。耳管は必要なときに開くようにできているのですが、開きっぱなしになると耳のつまる感じや、自声強聴(じせいきょうちょう)といい自分の声が大きく響くなどの不快感が生じます。耳管の働き

治療

症状が時々ある程度の比較的軽い場合には漢方などの内服を最初に行います。鼓膜の弾力が低下しますので、これを防ぐために鼓膜にテープを貼ったりすることもあります。こういった治療で良くならない場合や、四六時中症状のあるような重症の場合には耳管ピンというものを鼓膜切開して耳管に詰めることが行われます。

突発性難聴

突発性難聴とは、特別な誘因がなく,ある日突然発症する内耳性難聴です。症状は突然聞こえなくなることですが、耳鳴りやめまい、聴覚過敏などを伴うこともあります。直接的な原因は内耳へのウイルス感染、内耳の微小循環障害、自己免疫(自分の身体を攻撃しようとする抗体が作られ、内耳をターゲットとして認識、破壊する)などが考えられています。風邪症状や過度の心的ストレス、過重労働などによる体力的な疲れなどがあると発症しやすくなります。
内耳は耳を構成している中で最も深部にあり、しかも微細な構造が聞こえの機能を支えているので、そこで何が起こって突発性難聴になるのかは、まだ推測の域を出ないところがあります。
ステロイドの点滴療法が行われることが多いのですが、必ずしも全例に効果があるわけではないので、その他には高圧酸素療法、抗ウイルス剤の点滴、ビタミン剤、循環改善剤などを組み合わせて治療します。発症後の時間経過とともに、治る確率は低くなりますので、出来るだけ早く治療を始めることが大切です。

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急性低音障害型感音難聴

内耳のトラブルが原因で、ある日突然聞こえが悪くなるのは突発性難聴と同様ですが、低音障害型感音難聴では125〜500 Hz(ヘルツ)の低音のみの聞こえが障害され、また比較的治りやすいので、突発性難聴とは病態が異なるものと考えられています。
症状は突然起こる難聴ですが、耳閉感(じへいかん;耳の塞がる感じ、耳のつまる感じ)の強いことが特徴です。多くの場合は片側だけなのですが、両側に発症することもあります。起きていられないほどのめまいは伴わず、もし耳閉感とともにめまいが起こる場合は低音障害型感音難聴よりもメニエール病の可能性が高くなります。
直接的な原因はメニエール病と同様に内リンパ水腫が考えられています。発症のきっかけとなるのは過重労働や人間関係などによる心理的、体力的ストレスや寝不足などのことが多いようです。
治療には以前は突発性難聴に準じてステロイドが使われることが多かったのですが、最近では内リンパ水腫を軽減するため高浸透圧利尿剤(イソバイド、メニレットゼリー)を最初に使うべきと考えられるようになりました。
ほとんどのケースは数日程度で改善しますが、一部、発症後に難聴がさらに進行するケースもありますし、繰り返すこともあります。

→低音障害型感音難聴のオージオグラムの例

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メニエール病

メニエル病、メニエル氏病ということもあります。

難聴、耳鳴、めまいを三主徴とする。めまいを伴わないものは蝸牛型メニエール病といいますが、めまいがない場合は低音障害型感音性難聴との鑑別が難しくなります。かつて、めまいがすれば全てメニエール病といわれた時代がありましたが、実際にはめまいのする患者さんのうちの数パーセント程度と思われ、さほど頻度は高くありません。
難聴は発症時は低音障害型が多いのですが、発作を繰り返す毎に水平型に近づきます。耳鳴は非発作時にも持続することもありますが、発作時に強くなります。めまいは発作時には回転性(周りがぐるぐる回る、自分がぐるぐる回る)に強く、特に初回発作時が最も強いです。ある程度落ち着いてくるとフワフワした感じや、まっすぐ歩こうっとしてもどちらかに寄りそうな感じになる程度であることも多いになります。
治療は薬物療法が中心で、非発作時には高浸透圧利尿剤(イソバイド、メニレットゼリー)、ビタミンB12などを内服しますが、発作時にはそれに加えてステロイドを用いることもあります。また、発作に対する恐怖が強く、それがまたストレスになり発作を誘発してしまうような悪循環に陥っている場合には、精神安定剤や抗不安薬も併用します。めまいに対しては手術も有効なケースもありますが、進行したメニエール病の聴力を改善させる術式はありません。

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聴神経腫瘍

聴神経腫瘍は、第八脳神経である聴神経にできる神経鞘腫。良性の脳腫瘍です。腫瘍は内耳道(ないじどう)という聴神経を入れた骨の通路の中にできますが、大きくなると頭蓋内の小脳と脳幹の境目の方向へと進展します。
初期の症状は、難聴と耳鳴とめまいであり、突発性難聴やメニエール病のような症状で発症することも多く、問診や聴力検査だけでは区別がつきませんが、ABR(auditory brainstem evoked responceの略、日本語では聴性脳幹反応)といい、音を聞いてもらいながら脳波を記録するような検査や、MRIで診断できます。

耳鼻咽喉科と脳神経外科の境界領域の疾患なのですが、初発症状が耳の症状やめまいなので、耳鼻科を初診することが多いです。治療は手術的に腫瘍を摘出するか、放射線療法の一つであるガンマナイフかということになりますが、腫瘍の部位や残った聴力の程度などにより検討するひつようがあります。また、手術に際しては聴力を残すか、あきらめるか、顔面神経へのダメージの危険をいかに避けるかということが問題となります。もう一つの選択としては、MRIを定期的に行って経過をみていくということもありえます。

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遅発性内リンパ水腫

遅発性内リンパ腫は、もともと片耳の高度な感音性難聴(原因ははウイルス性難聴や突発性難聴など様々)があって、一旦は聴力が固定して落ち着いていたにもかかわらず、数年から数十年を経て、発症します。同じ耳の半規管の障害が原因となりメニエール病に似た回転性のめまい発作を起こすもの(同側型)と、反対側の耳の難聴、耳閉感が出現して、めまいも伴うもの(対側型)があります。
同側型では、聴神経腫瘍との鑑別が特に重要となるし、対側型ではたまたま反対側に生じたメニエール病との鑑別が難しいケースが多いです。

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良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症は、突然起こる回転性めまい(自分がぐるぐる回る感じ、天井や周りの景色がぐるぐる回る感じ)が主症状であり、難聴や耳鳴は伴いません。めまいの起こり方は非常に特徴的であり、振り向いたり寝返りを打ったり、起き上がったりと、顔の向きを急に変えたることがきっかけで起きます。めまい発作は数秒程度と短く、めまいの起こる動きも何度か繰り返すことにより、めまいはだんだんと起きなくなります。半規管の内腔へ結石が迷入すると、顔の向きを変えたり頭を動かしたときに、半規管の中では本来起こるべき方向とは異なるリンパの動きが生じて、いわばセンサーの誤作動が生じるようになるのが原因。ただし、いずれ結石はリンパの動きに影響を与えない部分に移動するので、後遺症も残さずに治ります。
かつては鎮暈剤(ちんうんざい;めまい止め)などの薬物療法が主流でしたが、近年は頭部を少しずつ回転させることにより、結石を半規管から追い出そうとする理学的療法(Epley法など)が行われるようになってきています。

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加齢による感音性難聴 (老人性難聴)

特に耳の病気をしたことがなくても、聴力は加齢とともに高音域から徐々に低下してきます。聴力検査をすると特に難聴の自覚のない人でも早い人では30代から、また多くの人は50代から高音部から徐々に聞こえにくくなってきます。急激な変化はないので本人は自覚していないこともありますし、また聞こえなくなることを恥ずかしがる風潮があるので、人の話が聞き取れなくなっても聞こえたふりをしてしまうこともあります。難聴によるコミュニケーション障害が生じると、当人は周囲から孤立してしまいがちになったり、受け答えがちぐはぐになってしまうことにより、実際よりも知能が低下したような誤解を受けてしまうことすらあるのです。残念ながら治療法はないので、ある程度進行してコミュニケーション障害が生じる場合は補聴器を付けるのが最善の策となります。さらに家族を中心とした周囲の人々が、難聴者の置かれている状況に理解を示していくことが大切になってきます。具体的には、はっきりゆっくり話すこと。聞き返されてもイライラせず根気よく話すこと、などが大切です。

→老人性難聴のオージオグラムの例

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音響外傷

音響外傷とは大きな音を聞くことにより、内耳がダメージを受けて聴力が低下する病気。特に非常に大きい音、例えばジェット機の爆音や爆薬が破裂する音(130デシベル以上)などを聞いた場合は、ほとんどの人が例外なく、しかも一瞬音を聞いただけだけで不可逆性の難聴が生じるのです(狭義の音響外傷)。
教義の音響外傷を生じるほどではないが、比較的大きい音、例えばロック・コンサートやクラブなどの大音響の音楽(110デシベル以上)でも難聴は生じます。音が大きければ大きいほど聴力が低下しやすいのはもちろん、音を聞いた時間が長くなるほど悪くなりやすい傾向があります(広義の音響外傷)。広義の音響外傷は同じ時間だけ同じ大きさの音を聞いたとしても、難聴になるならないは、個人差があります。また広義の音響外傷の場合、難聴は多くの場合一過性で回復が見られるのも、狭義の音響外傷との差です。

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騒音性難聴

騒音性難聴は、85デシベル以上の騒音を一日8時間以上、10年間聞き続けると難聴が生じます。
従って、うるさい職場で働いたために起こる職業性のものがほとんどです。
発症初期には自覚症のないこともあり、健診などの聴力検査で4,000 Hzの閾値上昇を指摘されて初めて気付くことが多いです。進行すれば他の周波数も聞こえづらくなるので、難聴を自覚するし、耳鳴が生じることもあります。
治療により改善することはないので、騒音下で働く人は定期的に聴力検査を受けて、もし4,000 Hzの閾値上昇が起こってきたら、配置換えを受けてそれ以上騒音に曝されないようにすることです。騒音を聞かなくなった時点から、難聴が進行することはありません。

→騒音性難聴のオージオグラムの例

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鼻・副鼻腔疾患

鼻前庭湿疹・鼻前庭炎

鼻前庭(びぜんてい)とは、鼻の孔から少し入ったところ、皮膚(鼻毛の生えている部分)と粘膜との境目付近あたりを指します。
この部位に炎症を起こすと、「鼻の中にかさぶたが貯まる」、「鼻が痛い」、「鼻が臭い」、「黄色い鼻が出る」などの症状が起こります。また特に子供に多いのですが、「鼻ほじり」の癖があると治りにくくなるし、鼻をほじくった手で自分自身の身体のあちこちを触るといわゆる「飛び火」となってしまいます。大人でも、つい鼻をほじってしまったり、鼻毛を抜いたり、鼻炎によって鼻をかみすぎたりしたところから、化膿して鼻前庭炎を起こすことがあります。
一番の治療は鼻をいじらない、擦らないことですが、アレルギー性鼻炎が原因となっていればその治療と、鼻前庭の化膿の程度が強ければ、抗生剤の内服が必要になることもあります。軽度であれば、抗生剤と消炎剤の合剤の軟膏を塗るだけでも数日で良くなります。

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急性鼻炎

急性鼻炎とは、いわゆる鼻風邪であり原因はウイルス感染が多いです。症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりであり、初期症状からはアレルギー性鼻炎と区別が付きにくいこともありますが、急性鼻炎では数日経つと鼻水からネバネバした鼻や黄色い鼻汁(ネギッパナ)に変化しさらに数日するとまた鼻水に戻ってやがては治ります。経過中に、咽の痛みや発熱、痰のからんだ咳などの風邪特有の症状を合併してきます。

ウイルス性の風邪であることがはっきりしていれば抗生剤は不要で、対症療法として抗ヒスタミン薬や鼻の切れを良くするための粘液溶解剤や消炎鎮痛剤を、必要に応じて内服するのみで、後は部屋の加湿(湿度50%程度がよい)等に気を付け、体力的にあまり無理をしないようにするのが大事です。ただし、急性扁桃炎、急性副鼻腔炎、急性中耳炎、急性気管支炎など、続発してくる合併症には注意が必要です。それらは細菌感染がほとんどなので、合併症を生じた場合は抗生剤も必要になってきます。

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アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は有病率20%以上で、もはや国民病といわれています。鼻の粘膜のI(いち)型アレルギーが原因で起こります。つまり発症までには、「抗原を吸入」→「IgE抗体の産生」→「再び同じ抗原を吸入」→「抗原と肥満細胞との間をIgE抗体が結びつける」→「鼻粘膜で炎症性の細胞が活性化」→「ヒスタミンやロイコトリエンが放出される」→「くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が出現」という段階を経ます。IgE抗体が作られるまでには、何度か抗原を吸入することが必要なのですが、抗原のできやすさには個人差があります。また、IgE抗体が高いからといってすぐに発症するわけでもなく、同じ様な高いIgE値の人でも発症している人いない人、また症状の重い人軽い人、様々で、必ずしもIgE抗体の有無や量だけでは論じられない所もあります。
原因となる抗体は、日本ではスギ花粉が最多であり、その他の花粉症としては、イネ科雑草であるカモガヤ、キク科雑草であるヨモギ、ブタクサなどが原因として多くみられます。一年を通じて症状がある通年性アレルギーではハウスダストとダニが原因のことがほとんどです。治療はまずは抗原の回避ですが、実際問題として抗原を全く吸入しないということは困難なので、医師の元での治療も必要となります。薬物療法が一般的に行われますが、あくまでも対症療法で、根治を望むのであれば減感作療法(免疫療法)しかありません。その他の比較的効果の長持ちする治療法としては、下鼻甲介焼灼術などの手術もあります。

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肥厚性鼻炎

急性鼻炎やアレルギー性鼻炎を何度も繰り返すと、腫れた鼻粘膜が正常に戻らなくなり、厚ぼったいままになるためにがんこな鼻づまりが生じる。特に鼻の中の下鼻甲介(かびこうかい)という部分が肥大しやすい。元々の原因となっているアレルギーなどを治療するとともに、鼻づまりの程度に応じて、下鼻甲介切除、粘膜下下鼻甲介切除、下鼻甲介焼灼術などを行うこともあります。このうち下鼻甲介焼灼術は、外来でも可能な手術です。

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血管運動性鼻炎

血管運動性鼻炎の症状は、「くしゃみ」、「鼻水」、「鼻づまり」で、アレルギー性鼻炎とほとんど同じですが、原因は自律神経のアンバランスにあります。比較的高齢者に多く、気温の変化や食事などによる刺激などで、無意識のうちに鼻水が垂れてしまったりします。一般的な鼻水止めである抗ヒスタミン薬や、ステロイドの点鼻が有効です。

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鼻出血

鼻血はほとんど出る場所が決まっていて、それは鼻中隔の前下方のキーゼルバッハ部位という場所からのものです。従って止血にはまず、鼻翼を外側から内側に向かって圧迫すること、あるいは鼻をつまむようにするのも有効。後は綿球(それがなければティッシュペーパを堅く丸めたもの)を鼻の中に入れて、同様に圧迫するのが有効です。また、鼻血が出ている間は横にならないようにし、咽に血液が落ちないように気を付けます。
止まらない鼻出血、頻回に繰り返す場合などは耳鼻科を受診することをお薦めします。基礎疾患としては子供の場合はアレルギー性鼻炎が多いのですが、大人では動脈硬化や高血圧が潜在的にあることが多いようです。血液疾患により出血傾向のあるようなケースも、時に見られます。また、鼻出血がきっかけで、鼻腔腫瘍や副鼻腔腫瘍が発見されケースも稀にはありますので要注意です。

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鼻ポリープ(鼻茸)

鼻ポリープ(鼻茸;はなたけ)とは、鼻粘膜や副鼻腔の粘膜に炎症が続いて起き、房状に垂れ下がってしまったものです。大きいものでは5 cm位まで伸びますので、気道を閉塞するので鼻閉を生じます。中鼻道(ちゅびどう)にできるものが最も多いですが、その他には中鼻甲介や嗅裂部にもできます。また後方に発育したものを後鼻孔ポリープといい、大きくなると上咽頭を占拠するので、両側の鼻閉が生じます。

原因疾患により鼻茸のでき方は若干異なり、細菌性の副鼻腔炎を繰り返した場合は単発性の鼻茸であることが多く、アレルギー性あるいは好酸球性鼻炎、副鼻腔炎では多発性鼻茸となり、特に早期から嗅裂部にもできるので、嗅覚障害を起こしやすくなります。
比較的小さい鼻茸は原因疾患を治療したり、ステロイドの点鼻をしたりすると縮小あるいは消失しますが、ある程度大きな鼻茸は、副鼻腔への通路を完全に閉塞するので、ますます副鼻腔炎が解消されにくく悪循環となるため、保存的治療では治りません。この場合は手術が必要で、姑息的には鼻茸を取るだけですが、とりあえず鼻閉は解消するものの副鼻腔炎が解消されないと再発することも多いです。根治的には鼻茸を取るのみでなく、副鼻腔への通路をさらにきれいにして、充分に空気が流れるようにしなくてはなりません。その目的で、鼻内内視鏡手術が行われます。

鼻茸

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嗅覚障害

嗅覚障害とは、匂いが静楽なっている状態で、強い臭いは分かるが、弱い臭いは分からない程度から、臭いが全くしない状態まで程度は様々です。臭いは鼻腔上部の嗅裂部で感知しますが、そこまで臭いを含んだ空気が届かないための「呼吸性嗅覚障害」、臭いを含んだ空気が届いても、いわば臭いのセンサーである嗅上皮が鈍感になっているための「嗅上皮性嗅覚障害」、空気も届きにくいし嗅上皮も鈍感になっている「混合性嗅覚障害」とに分けられます。その他、中枢性嗅覚障害というのもありますが、こちらは比較的まれです。原因となる主な疾患としては、急性鼻炎、インフルエンザ、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻茸、鼻中隔湾曲症など様々な、鼻・副鼻腔の炎症性疾患があります。
治療は原因となっている鼻炎や副鼻腔炎の治療を行うとともに、粘膜収縮剤とステロイドの点鼻の点鼻を行います。

また、鼻中隔湾曲症や鼻茸によって嗅裂部が極端に狭くなっている場合は、薬では良くなりませんので手術が必要となります。

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鼻腔異物
子供に多い疾患であるが、鼻の中に異物を詰めてしまい取れなくなってしまう状態。異物としては、おもちゃの部品や豆などの食品、ティッシュペーパーなどが多い。特におもちゃのピストルの弾やビーズなど、球形に近いものは取りにくい。家庭で取るのも悪くはないが、深追いすると奥に押し込んだり、子供が痛がったり、鼻血が出たりするので、さらに取りにくくなることもある。家庭での摘出が無理なら、早めに耳鼻科を受診させた方が得策。気を付けなければならないのはボタン電池で、比較的短時間入っていただけでも、鼻中隔穿孔を起こすことが知られている。
親が知らない間に、子供が何かを鼻に詰め込んでしまうことも結構ある。この場合、数日間気付かれずに、いずれ「鼻が臭い」、「片方の鼻からだけ黄色い鼻が出る」などの症状で来院する。
ほとんどのケースは鼻の孔から摘出でき、その後の治療は、もし異物が入っていたことによって鼻炎などがあれば、数日抗生剤を内服するぐらいである。
鼻腔腫瘍(良性・悪性)
乳頭腫、悪性黒色腫、悪性リンパ腫など。
急性副鼻腔炎

副鼻腔炎とはいわゆる蓄膿症のことである。
副鼻腔は鼻腔から連続した顔面の骨の中の空洞であり、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞などがある。急性鼻炎後に鼻腔内の細菌が直接副鼻腔に侵入して増殖することと、急性炎症により副鼻腔自然孔(鼻腔と副鼻腔をつないでいる通路)が塞がり、副鼻腔の粘膜が機能不全を起こす。症状は鼻づまり、膿性鼻漏(黄色い鼻汁)、鼻の中の悪臭などである。 顔面の骨の中で炎症を起こすので、頭痛、目の奥の痛み、頬の痛みなどが生じることもあるし、熱の続くこともある。風邪に続発するほか、虫歯が原因となる、歯性上顎洞炎というのもある。自然治癒もあり得なくはないが、副鼻腔自然孔が閉じてしまうと治りにくくなり、遷延化あるいは慢性化する。
耳鼻科では鼻内の診察(肉眼で鼻の中を診る、あるいは内視鏡を使う場合もあり)とレントゲン検査(単純撮影、CT)で診断は付く。薬物治療(抗菌剤の内服やひどいときは抗生剤の点滴、消炎剤の内服)と鼻処置(鼻の中に粘膜収縮剤を噴霧あるいは塗布、鼻汁を吸引)後、ネブライザー療法を行う。この処置は頻回に行った方が効果的なので、可能な限り期間を空けずに通院することが望ましい。遷延化、慢性化した場合は手術が必要となるケースもある。

好酸球性副鼻腔炎

数年前より注目されている副鼻腔炎。近年、一般的な副鼻腔炎は、マクロライドの少量長期療法や鼻内視鏡手術によって治りやすくなったが、逆に、それでは良くならない副鼻腔炎としてクローズアップされることとなったのが、好酸球性副鼻腔炎である。喘息に合併しやすく、比較的小さめの鼻茸が中鼻甲介を中心に多発し、ベタベタした切れの悪い鼻汁が溜まるが、その割に鼻の中の悪臭や発熱、痛みといった急性炎症の症状はない。後鼻漏(鼻汁が咽に流れ落ちること)は比較的多く、もともと気管支や喉頭の過敏性も亢進していることが多いので、咳や喉のイガイガ感も長く続くこととなる。鼻茸が嗅裂部にもできやすいので、早期から嗅覚障害も生じやすい。
保存的治療として最も有効なのはステロイドの内服であるが、副作用の問題から長期には続けられない。好酸球抑制作用のある抗アレルギー薬の内服を行うこと、また鼻の中を生理食塩水で洗う鼻洗も有効である。
手術は内視鏡的鼻内手術が行われるが、再発が多いので、術後の鼻、副鼻腔の洗浄などの処置もまた重要である。

慢性副鼻腔炎

急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、急性副鼻腔炎などを繰り返すと、副鼻腔粘膜はダメージを受ける。副鼻腔粘膜には、もともと自浄作が備わっており、ある程度のダメージであれば修復可能である。しかし、鼻腔内や副鼻腔内の炎症が高度であったり長引いたりした場合は、非可逆性の障害が副鼻腔粘膜に起こる。これが慢性副鼻腔炎である。また、人によって鼻腔内の形状や気道粘膜の質が、気道の慢性炎症を来しやすい体質である場合もあり、それには遺伝的な要因も関係するようである。
症状は、しつこい鼻づまり、濃い鼻汁、頭重感、後鼻漏(鼻汁が咽に落ちる)などの症状が3ヶ月以上続く。
診断は鼻の中の診察(肉眼的、あるいは内視鏡的)、レントゲン検査(単純X線、CT)でつくが、アレルギー性鼻炎の合併も多いので、アレルギー検査も行うことも多い。
治療は、保存的にはマクロライド少量長期療法が非常に有効である。この治療法は10数年前から一般的になった治療法で、マクロライドという系統の抗生剤を、常用量の半量程度を内服する治療法である。2〜3ヶ月間程度薬は飲み続けなくてはならないが、以前であれば手術が必要だったものが、手術なしでも治るようになってきている。ただし、重症の場合はやはり手術が必要で、この場合は内視鏡手術を行うことが一般的である。

副鼻腔真菌症

真菌(カビ)による副鼻腔炎であり、起因菌としてはアスペルギルス、カンジダが多い。感染を起こす副鼻腔としては、上顎洞が最も多く、次に蝶形骨洞に多い。両側のことはまれであり、ほとんどが一側性なのが一般的な慢性副鼻腔炎との相違である。症状は膿性鼻漏、鼻づまり、後鼻漏などが多いが、一部のものは血性鼻漏といい血の混じった鼻汁を伴い、頬部の痛みを来すものがあり、その場合は腫瘍(特に上顎癌)との鑑別が問題となる。

治療は、鼻内内視鏡手術にて真菌塊を摘出し、粘膜病変が認められばこれもできるだけきれいにする。
術後は抗真菌薬の内服や点滴、副鼻腔への注入などが残った真菌を殺菌して、再発を防ぐのに有効である。

副鼻腔腫瘍(良性・悪性)

副鼻腔の悪性腫瘍といえばかつては上顎癌が多かったが、最近は少なくなっている。

上顎癌には集学的治療(手術、放射線療法、化学療法)が行われるが、顔面の機能を温存しつついかに治癒に導くかが、耳鼻咽喉科医にとってのテーマである。

口腔の疾患

アフタ性口内炎

特に明らかな誘因もなく、口の中の粘膜に円形の浅い潰瘍ができることがある。その多くはアフタ性口内炎と呼ばれるもので、頬の内側、唇の内側、歯茎などにできやすい。症状としては、局所的な痛みであるが、発熱などは伴わない。風邪で免疫のバランスが崩れたとき、栄養の偏りなどのあるときなどにできやすいが、体質的に繰り返しできやすい人もいる。

治療は、口腔内専用のステロイドの軟膏を塗ったり、ビタミン剤や消炎鎮痛剤を内服する。

舌炎

舌が炎症を起こした状態で、自覚的には痛みを感じる。痛みは、特に食べ物を食べるときにひどくなる。

原因は、歯で傷つけてしまった場合、ビタミン不足、免疫のバランスが崩れたとき、貧血などでも起こる。

ステロイドの塗り薬、消炎鎮痛剤やマルチビタミン剤の内服が有効である。

舌の潰瘍や”しこり”を伴う場合は、舌癌の可能性があり、特に舌の側面にできている場合は要注意。

ガマ種

口腔底(こうくうてい)にできる、嚢胞性疾患。舌下腺(ぜっかせん)という唾液を作る組織から、唾液が漏れ出してしまい、行き場のない唾液が粘膜下に貯まり、偽嚢胞(ぎのうほう)と呼ばれる袋を作る。貯まる唾液が多くなればなるほど、袋は大きくなり、舌も動かしづらくなるので、しゃべるときや物を食べるときに気になるようになる。

さらに巨大化すると、下あごの下が腫れてくるので、見た目にも気になるようになってくる。

治療はかつては手術的に摘出したり、開窓術といって、唾液が貯まらないように口腔内に逃げ道を作るようにしていたが、再発も多かった。最近では耳血腫と同様にピシバニールによる硬化療法が有効であることが分かり、臨床応用されている。これであれば、嚢胞に細い針で薬液を注入するだけで、本人も楽であるし、再発も少ない利点がある。

唾石症

唾液腺で作られた唾液は導管を通って口の中に送り込まれるが、この管の中に結石ができることがある。ほとんどが顎下腺の導管である、ワルトン管の中にできる。(ごくごくまれには、耳下腺の導管であるステノン管にできることもある。)

唾石により導管がつまってしまうと、作られた唾液が口腔内へ分泌できなくなるので、顎下部(耳下腺の場合は耳下部)に痛みを生じ、特に食事の時には痛みや腫れが強くなる。

自然に開口部から結石が出てくる可能性もあるが、出てこなければ手術が必要。

結石が開口部近くであれば、口の中から導管を少し切開して摘出可能であるが、顎下腺の方に近い場合は下顎の下を数センチ切開して、顎下腺ごと摘出する必要がある。この場合は、全身麻酔と入院を要する。

咽喉頭疾患

急性扁桃炎

カゼに引き続いて、扁桃に細菌が感染した状態。扁桃は腫れ上がり、白い膿が付着します。飲み込む時に強い咽の痛みが生じ、40度近い高熱が出ることもあります。溶連菌(ようれんきん)が原因のことも多いです。

自然に治癒することもありますが、ひどくなると痛みのために食べられなくなるので、体力が低下し抵抗力もなくなって、悪循環に陥ります。治療には抗生剤が有効で、食事が摂れるうちは飲み薬でも良いですが、食べられないほどひどい状態では抗生剤の点滴、補液も必要となります。

年に4〜5回以上繰り返す場合には、手術(口蓋扁桃摘出術)が勧められます。

扁桃炎

習慣性扁桃炎
急性扁桃炎を繰り返すもの。年に4〜5回以上繰り返す場合や、溶連菌感染を繰り返す場合には、扁桃腺を手術的に取ることが勧められます。
慢性扁桃炎

ひどい痛みや高熱こそ起こさないものの、咽のひりひり感や痰の絡まる様な感じが続きます。扁桃が少し赤い状態が続いたり、少しの量の膿が陰窩に貯まったもの(膿栓)が常にあるようになります。

急性炎症がきちんと治りきらなかったりした場合や、たばこを吸う人に多くみられる。膿栓は咳き込んだ時などに扁桃から剥がれて、口から出てくることがあります。黄白色の粘土状のものなのですが、つぶすとビックリするほどの悪臭を放つことから、一般的には「臭い玉」などとも呼ばれているようです。

扁桃肥大

扁桃とは鼻腔や口腔から咽に通じる部分にあるリンパ節で、口蓋扁桃、咽頭扁桃(アデノイド)、舌扁桃がありますが、単に扁桃という場合には口蓋扁桃を指します。扁桃は本来、免疫機能の一端を担っており口や鼻から侵入した病原体を捕獲して、その情報を全身の免疫系に受け渡す役割をしています。しかし小児期におおよその役割は終了し、成長した後には無用の長物となることもあります。

扁桃の大きさには個人差がありますし、年齢によっても大きさが変化します。一生の中で最も大きくなるのは7歳前後です。扁桃が大きいことによる弊害は、上気道を閉塞することです。具体的にはいびき、さらには睡眠時無呼吸などが生じます。

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扁桃肥大

アデノイド増殖症

アデノイドとは鼻と咽の間にあるリンパ組織で、咽頭扁桃ともいいます。誰にでもある組織なのですが、特に幼児期に生理的に大きくなります。アデノイドの大きくなるピークは5歳頃で、その年齢を過ぎると大抵の場合は萎縮して、大人ではほとんど表面から見ても分からないぐらいになります。

このアデノイドが極端に大きい状態を、「アデノイド増殖症」あるいは単に「アデノイド」といいます。アデノイドが大きいと、図2のようにまず鼻からの吸気の流れが遮断されます。これにより、鼻呼吸出来なくなり、口で息をするようになります。また、夜にはイビキをかいたり、呼吸が止まることもあります。一言で言えば気道閉塞ということになりますが、これが長く続くと、漏斗胸といって胸が変形したり、アデノイド顔貌といって、何となく"しまりのない顔"になったりします。

その他には、合併症として急性中耳炎や滲出性中耳炎を起こしやすくなります。これは、アデノイドが直接、耳管開口部を塞いでしまうことと、アデノイドに起こった炎症の耳管に波及することが原因と考えられます。また、アデノイドが大きいと、高率に副鼻腔炎も合併します。

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