上咽頭擦過療法(いわゆるBスポット療法)とは、巻綿子と綿棒に塩化亜鉛を含ませて、上咽頭を少し強く擦る治療法です。
上咽頭という場所は鼻から咽に入ったところの突き当たり、咽の一番上、言い換えれば頭の直ぐ下にあり、気道の一部を成すのと同時に、免疫に深く関わっていたり、自律神経へも影響を及ぼします。そのため、上咽頭の炎症が後鼻漏、咽の違和感、頭痛、めまい、腎疾患、皮膚炎、関節炎など多彩な症状の原因となり得ると考えられています。
そういった症状を持つ患者さんの上咽頭を、ファイバースコープで見ますと、炎症を起こしていることが多く、その場合、この治療法により症状の軽減が期待出来ます。 意外なことに、上咽頭に関心を払う耳鼻科はそう多くなく、治療を行っているところはまだ少数ですが、当院では数年前から行っております。 上咽頭を擦る際に多少痛みはありますが、原因不明で頑固な後鼻漏やめまいなどに対しての効果も期待できます。また、最近では新型コロナウイルス感染の後遺症、いわゆるlong covidによる慢性疲労、brain fog、全身の不調に対する効果も期待されています。
この治療は数十年前から、有効性について報告されてきました。しかし、有効とされた疾患が余りにも多岐にわたっていたため、逆に多くの医師に胡散臭いと敬遠されたこと、ファイバースコープのない時代には炎症の証明が難しかったこと、それなりに手間がかかる割には保険点数としては全く評価されなかったなどの理由で廃れてしまったようです。 しかし、ファイバースコープを駆使することにより上咽頭を直接見ながら、より効果的に治療が行えるようになったのが、以前と異なる点であり、当院においてもファイバー下の上咽頭擦過療法を行っています。