急性中耳炎

急性中耳炎とは?

細菌やウイルスの感染によって引き起こされる中耳炎で、多くの場合はカゼ引きの時に起こります。特に小さな子供に多く、カゼに続発して耳の痛みや耳だれを引き起こします。特に保育所などで集団生活をしている子供は、かかりやすい傾向にあります。

原因となる病原体は?

肺炎球菌やインフルエンザ菌が多く、特に耐性菌といって抗生物質に抵抗を示す菌が増えています。細菌以外では、アデノウイルスなどが関係していると思われます。

罹りやすいのは?

4歳以下の子供、その中でも特に、2歳以下の乳幼児で、保育所などに預けられている子供には多発します。しかもこのように早くから預けられている子では、重症化して長引く傾向にあります。
それは、細菌に対する抵抗力が不十分なうちから、年長児などの持ち込んだ細菌の洗礼を浴びることによります。保育所を休ませれば、多くの場合急性中耳炎は治りますが、家庭の事情などで、なかなか休ませられないことが多いのが課題となります。

病気の起こり方と症状


急性中耳炎は、ほとんどがカゼに続発して起こります。それは、鼻の奥と中耳が連続しているからなのですが、感染の広がる様子や、それに伴う症状などを図で説明します。

1.鼓室への細菌の侵入 急性中耳炎の説明図1

鼓室への細菌の侵入カゼの時には鼻の奥の上咽頭という部分に細菌が繁殖しているのですが、それが耳管(鼻の奥と耳をつないでいる管)を通って、鼓室へと侵入します。

2.鼓室粘膜、鼓膜の炎症

急性中耳炎の説明図w
細菌の感染により鼓室粘膜や鼓膜に炎症が起き、充血して腫れるので、この時期に診察すると、鼓膜は赤く見えます。鼓室粘膜や耳管に本来備わっている、自浄作用などの機能が炎症により低下します。

3.膿の貯留

急性中耳炎の説明図3
細菌の活動により、鼓室内では膿(うみ)が作られますが、耳管の働きが悪くなっているため、うまく排泄されず、鼓室内に溜まっていきます。症状としては耳の痛みや、耳がゴロゴロとした様な違和感がだんだんと強くなってきます。
この時期に診察すると、鼓膜の裏側に膿の溜まっている様子が分かります。

4.膿の充満

急性中耳炎の説明図4

さらに膿が増えてくると周囲を圧迫しますので、我慢できないほど強い痛みになります。2歳 以下のまだ上手にお話しできない子の場合は、痛みを訴えられないので、理由もなく不機嫌だということで、耳鼻科に連れてこられて急性中耳炎であることが判明する、ということも多いです。
この状態ですと、鼓膜はがなり盛り上がっているように見えます。

5.膿の流出(耳だれ)

急性中耳炎その後も膿が増え続けるとやがては鼓膜を破って膿が外耳道へと流れ出します。これが、耳漏(じろう;いわゆる”耳だれ”)ですが、一旦膿が耳漏として流れ出してしまうと、中耳の内圧は下がりますから、痛みは和らいできます。

6.その後の経過

鼻の奥や中耳の炎症が治まってくれば、新しく作られる耳漏もなくなってきます。鼓膜に開いた穴も徐々に閉じて治っていきます。
しかし、身体の免疫力よりも菌の増殖力の方が強い場合、また、耐性菌といって抗生剤の効き難い菌が原因の場合は、耳漏がなかなか止まらず、中耳粘膜も正常化しないため、なかなか治らないこともあります。また、菌がいなくなった後も、中耳に水や粘液が残ったままとなり、痛みはないものの、聞こえにくい状態だけが続くこともあります。

治療は?

抗生剤の内服

まずは、抗生剤の内服が基本です。特に小児の急性中耳炎では、ペニシリン系のサワシリンやクラバモックス、セフェム系のメイアクトなどを使います。「耐性菌が原因の場合」や、「高熱を伴う場合」、「中耳に溜まった膿が多い場合」、「罹った子が低年齢である場合」、「保育所に入っている場合」などは治りにくくなることが多いので、最初からやや強めの抗生剤を使うことが多くなります。その場合、最も問題になりやすい副作用としては、下痢があります。それを防ぐため、あらかじめ整腸剤を飲んでもらうことも多いです。その他には、薬による皮膚のアレルギー反応で薬疹(やくしん)という発疹がでることがあります。多くの場合痒みを伴います。万が一薬疹が出たら、抗生剤の種類を変える必要があります。

耳浴

また、鼓膜穿孔がある場合や外耳炎を伴う場合には、耳浴(じよく)といい、直接耳に液状の抗菌剤を垂らして、直接患部に浸透させることも行います。通院により行う場合もありますが、多くの場合は家庭で自分や家族にやっていただきます。

消炎鎮痛剤

痛みに対しては、消炎鎮痛剤を内服や、坐薬として使います。痛みの程度によって、頓用(痛いときのみ使う)として処方したり、1日に2ないし3回内服という形で処方したりします。なお、市販の風邪薬や、カゼの時に小児科で処方される薬にも同じ効果の薬が含まれていることが多いので、薬が重複しないよう注意が必要です。

鼓膜切開術

鼓室内に膿汁が充満して、鼓膜が持ち上げられているような状態の時には、痛みが非常に強くなります。それは、鼓室の内圧が高まることによります。また、膿汁が鼓室に居座ることにより、聞こえも悪くなるし、炎症も長引くことになります。
そのような場合には、鼓膜切開をして鼓室内の膿汁を吸引してしまった方が、痛みや難聴も速やかに軽快します。鼓膜のごく一部を2~3 mm程度切開するのですが、切開によって出来た鼓膜の孔は、数日で自然閉鎖します。
鼓膜切開術は、多くの場合はイオントフォレーゼといい、耳の中に麻酔液を入れて、弱い電流を流す方法で局所麻酔して行います。ただしこれには11分程じっと動かないで横向きに寝ている必要がありますから、小さいお子さんでじっとしていられない場合は、無麻酔で切開せざるを得ないこともあります。

鼓膜チューブ留置術(チュービング)

鼓膜切開しても、また直ぐに膿汁が溜まってしまう場合に行う、もう一歩進んだ治療法です。鼓膜を切開した後に、膿汁の出口と換気を兼ねたチューブを入れます。鼓膜切開だけに比べて、効果が持続するという特徴があります。
チューブはごく小さいものですの、外からはもちろん見えませんし、違和感などもありません。ただし、常に鼓膜に小さいながらも孔が開いた状態になりますので、シャンプーや水泳の際に耳に水が入らない様に注意する必要があります。

日常の注意事項は?

水泳とシャンプーについて

まずは、耳の中に水が入らないよう気を付けることです。外耳道側から雑菌などが侵入するのを防ぐためですが、中耳炎のひどいときには、シャンプーも禁止することがあります。軽ければ綿球をしてシャンプーは可能ですが、ほとんどの場合水泳は控えた方が良いでしょう。

鼻のかみ方

鼻の奥から上咽頭に住んでいる細菌が中耳炎の原因となっており、またそれらの細菌による炎症のために出来た鼻汁などが耳管を塞いだり、耳管を腫れさせたりすることが中耳炎の長引く原因となります。したがって、鼻をまめにかんで、細菌とその産物である黄色い鼻汁を追い出すことが重要です。それにはマメに鼻かみするべきですが、正しいかみ方でないと逆効果となることもあります。正しいのは、片側ずつ交互に鼻を押さえながら、いきなり強くかまずに、ゆっくりと鼻を出すことです。両側いっぺんにかんだり、強くかみすぎるのは、逆に鼓室へと細菌を追いやる結果となってしまいます。また。、鼻をすすると、いったん鼓室が陰圧になり、それが戻るときに、上咽頭から鼻汁を鼓室へと吸い込んでしまう結果になりますので、鼻すすりは止めましょう。

よくある質問

Q1: 急性中耳炎のとき、幼稚園やお風呂はどうしたらいいですか?

急性中耳炎でも痛みが落ち着いていて熱もなければ、幼稚園に行っても大丈夫ですし、入浴させても大丈夫です。ただし、耳の中にお風呂の水が入ると、感染がひどくなることもありますので、洗髪は控えるか、耳に水が入らないよう注意する必要があります。同じ理由で水泳も禁止してください。そのほかの生活は普段通りで良いと思います。

Q2: 子供が中耳炎に何回も罹るのですが、体質的なものなのでしょうか?

まず、一般的に子供は中耳炎にかかりやすいです。それは「もともと免疫力が発展途上にあること」、「耳管が水平に近く、細菌を排除する力も弱いこと」、「アデノイドや副鼻腔炎など、耳管周囲に炎症が起こりやすいこと」などによります。
また、乳児期より保育所などに預けられている場合は、早くから色々な病原菌にさらされる機会が多くなりますから、それに伴って中耳炎になる機会も増えてきます。
急性中耳炎は主に細菌感染でおこるのでえすが、耐性菌といって、抗生剤の効きにくい菌による中耳炎の場合は、なかなか完全には除菌出来ない場合も多く、治ったかに見えて直ぐにまた再燃したりしやすくなります。

Q3: 子供が、夜中に急に耳を痛がりだしました。どうすればよいでしょう?

急性中耳炎の可能性が高いと思われます。可能ならば夜間診療所や病院の救急外来で診てもらいましょう。その場合、耳鼻科医以外の当直医が診察する場合がほとんどですが、それでもある程度の診断はつきますし、薬も処方してもらえますので大丈夫です。もちろん必要があれば耳鼻科医にも相談してくれるはずです。