耳鳴について考える〜脳と音の関係〜

聴覚中枢

内耳で音の振動のエネルギーを神経の興奮という電気的エネルギーに変換、脳幹では音の周波数の解析が行われ、大脳皮質で言葉や音楽として理解されるという一連の流れを、聴覚伝導路ということを前項「耳鳴について考える〜聴覚伝導路〜」で説明しました。しかし音の刺激によって起こる脳の活動は他にもいろいろ複雑なルートがあり、特に大脳辺縁系という部分の働きが最近注目されています。

大脳辺縁系というのは、大脳の中では内側の方にあって、海馬(かいば)や扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる部位などからなります。大脳皮質が、新しい大脳としてヒトに進化してから飛躍的に発達した部分ですが、大脳辺縁系はいわゆる旧い脳の部分で、哺乳類では種が違っても ほぼ同じ程度の機能を持つといわれます。

図の矢印は音を聞くことによって生じた神経の活動電位が、どのように脳内を伝わるかを示します。扁桃体へとつながるルートとしては、脳幹から直接 入ってくるルートと、大脳皮質から海馬の順に経由して情報処理を受けて入ってくるルートの二通りあります。

扁桃体では音などの外界の刺激に対して、それが自己にとって益になるのか害になるのかの価値判断が行われ、益ならば快情動(気持ちいいということ)が起き、害と判断されれば不快情動(気持ち悪く思うことや恐怖感など)が起こります。

扁桃体からは大脳皮質へと戻るルートと視床下部を介して、自律神経に命令を送るルートがあります。扁桃体からの大脳皮質への信号は脳を覚醒状態に保ち、刺激に対する感受性を高めて、皮質を活性化するといわれています。一方、自律神経は呼吸、循環、摂食、水分代謝など、内臓の活動の調節を行っていますが、音の刺激がこういった生命維持の根源とも言える働きに影響を与えることになるのです。例えば、不快な音を聞いて鳥肌が立ったりするのは、音の刺激に自律神経が反応したと考えられます。

以上のように、音を聞いたときの脳の反応としては、大脳皮質で理知的に判断するだけでなく、大脳辺縁系で情動的に快か不快か直感的に判断したり、自律神経症状が起こったりと、脳内のいろいろ部位で、反応が起こります。さらには、それらの反応は、互いに関連しあっているというのが、今日の音と脳との関係の話のまとめです。

実際の音の刺激のみならず、耳鳴においても脳の関与は大きいことは、特に最近いわれていることでして、その辺については、また、次回にお話ししたいと思います。

参考文献
川村光毅:扁桃体の構成と機能. 臨床精神医学 36 (2007) 817-828 (アークメディア)