急性中耳炎

細菌やウイルスの感染によって引き起こされる中耳炎で、多くの場合はカゼ引きの時に起こります。小さな子供に多く、耳の痛みや耳だれを引き起こします。特に保育所などで集団生活をしている子供は、かかりやすい傾向にあります。

原因

カゼの時には鼻の奥の上咽頭という部分に細菌が繁殖しているのですが、それが耳管(鼻の奥と耳をつないでいる管)を通って、鼓室へと侵入します。細菌の感染により鼓室粘膜や鼓膜に炎症が起きます。炎症により鼓室粘膜や耳管に本来備わっている、自浄作用などの機能が炎症により低下して鼓室内に膿がたまります。膿が増えてくると周囲を圧迫しますので、我慢できないほど強い痛みになります。>膿が増え続けるとやがては鼓膜を破って膿が外耳道へと流れ出します。これが、耳漏(じろう;いわゆる”耳だれ”)です。

治療は?

抗生剤の内服

まずは、抗生剤の内服が基本です。特に小児の急性中耳炎では、ペニシリン系のサワシリンやクラバモックス、セフェム系のメイアクトなどを使います。「耐性菌が原因の場合」や、「高熱を伴う場合」、「中耳に溜まった膿が多い場合」、「罹った子が低年齢である場合」、「保育所に入っている場合」などは治りにくくなることが多いので、最初からやや強めの抗生剤を使うことが多くなります。副作用としては、下痢があります。それを防ぐため、あらかじめ整腸剤を飲んでもらうことも多いです。

耳浴

また、鼓膜穿孔がある場合や外耳炎を伴う場合には、耳浴(じよく)といい、直接耳に液状の抗菌剤を垂らして、直接患部に浸透させることも行います。通院により行う場合もありますが、多くの場合は家庭で自分や家族にやっていただきます。

消炎鎮痛剤

痛みに対しては、消炎鎮痛剤を内服や、坐薬として使います。痛みの程度によって、頓用(痛いときのみ使う)として処方したり、1日に2ないし3回内服という形で処方したりします。なお、市販の風邪薬や、カゼの時に小児科で処方される薬にも同じ効果の薬が含まれていることが多いので、薬が重複しないよう注意が必要です。

鼓膜切開術

鼓室内に膿汁が充満して、鼓膜が持ち上げられているような状態の時には、痛みが非常に強くなります。それは、鼓室の内圧が高まることによります。また、膿汁が鼓室に居座ることにより、聞こえも悪くなるし、炎症も長引くことになります。
そのような場合には、鼓膜切開をして鼓室内の膿汁を吸引してしまった方が、痛みや難聴も速やかに軽快します。鼓膜のごく一部を2~3 mm程度切開するのですが、切開によって出来た鼓膜の孔は、数日で自然閉鎖します。
鼓膜切開術は、多くの場合はイオントフォレーゼといい、耳の中に麻酔液を入れて、弱い電流を流す方法で局所麻酔して行います。ただしこれには、11分程じっと動かないで横向きに寝ている必要があります。

日常の注意事項

まずは、耳の中に水が入らないよう気を付けることです。外耳道側から雑菌などが侵入するのを防ぐためですが、中耳炎のひどいときには、シャンプーも禁止することがあります。軽ければ綿球をしてシャンプーは可能ですが、ほとんどの場合水泳は控えた方が良いでしょう。

鼻をまめにかむことも重要です。上咽頭に細菌を含む鼻汁を貯めないよう、片側ずつ交互に鼻を押さえながら、いきなり強くかまずに、ゆっくりと鼻を出しましょう。両側いっぺんにかんだり、強くかみすぎるのは、逆に鼓室へと細菌を追いやる結果となってしまいます。また。、鼻をすすると、いったん鼓室が陰圧になり、それが戻るときに、上咽頭から鼻汁を鼓室へと吸い込んでしまう結果になりますので、鼻すすりをしないよう注意する必要があります。