耳かす・耳垢を取って欲しい

概要

耳垢は文字通り垢で、鼓膜や外耳道の皮膚の古くなった部分が剥がれてできまというもので、もう一つはベタベタした湿型耳垢ですが、日本人では乾型耳垢の方が多いです。乾型になるか湿型になるかは遺伝によって決まり、どちらが良いとか悪いといったことはありません。乾型の方が貯まりにくいという傾向はありますが、実は、乾型の方は耳垢を作る遺伝子の変異でそうなったのだそうで、人間本来の姿としては湿型の耳垢であったようです。
通常耳垢は勝手に外側へと移動し、無意識のうちに外耳孔から出て行っていますので、極端に貯まることはまずありません。ですから耳掃除は1週間に1度もやれば十分で、むしろやり過ぎは禁物です。
たまに、耳垢を取ってもらうためだけに、耳鼻科を受診して良いものかどうかという質問を受けることがありますが、全く問題ありません。

診察

耳の中を耳鏡でよく診ます。「耳垢を取って欲しい。」ということで来院しても、実際には耳垢は貯まっていないこともありますし、ぎっしりとつまっている場合もあります。耳垢がほとんどない場合には、むしろ他の病気によって耳の違和感が生じていないか注意する必要があります。外耳炎を伴っていることもありますので、外耳道の皮膚の状態もよく診ます。

検査

耳垢を除去しても聞こえが悪い場合には、聴力検査を行うこともあります。

治療

耳の中を顕微鏡で見ながら、鉗子や異物鉤(いぶつこう)、吸引管などを駆使して、出来るだけ丁寧に耳垢を取り除きます。耳垢が堅くなってなかなか取れない時には、耳浴を行って柔らかくしてから取ることもあります。痛みの強かったり、あまりにも頑固でなかなか取れない場合は、無理をせずに2〜3回に分けて取ることもあります。

耳垢の種類と地域性

耳垢(じこう;みみあか)には二つのタイプがあることは、ご存じの方も多いかと思います。一つは湿型といって茶色でネバネバしているタイプ、もう一つは乾型といって肌色でカサカサしたタイプです。湿型になるか乾型になるかは大分前から、"メンデルの法則"に従って遺伝することが知られていました。例えば、両親が湿型なら子供はみんな湿型。両親のどちらかが湿型でもう一方が乾型なら子供は湿型も乾型もあり。両親とも乾型ならば子供は全員乾型になるという具合です。 また、湿型が多いか乾型が多いかというのは地域によってもばらつきがあって、世界レベルで見ると湿型が多いのはアフリカやヨーロッパなどで、アメリカ大陸でもアラスカや南米、東アジアには乾型が多いとのことです。我が日本は圧倒的に乾型優位の国で、人口の80%程度は乾型です。しかし、祖先が古くから日本国内にいたといわれる北海道のアイヌ民族や沖縄などは例外的に湿型が多いそうです。 また、湿型の耳垢の人は汗腺のうちでもアポクリン腺という臭いのある汗を作るところが発達していますから、わきがの人が多いということが知られていました。 さて、以上のようなことは以前からいわれていたのですが、それを裏付ける大発見が21世紀になってからありました。詳しくはリンク先である、「耳垢と抗がん剤」 ヒトの耳垢型がABCC11遺伝子の一塩基の変化で決定されることを発見 というページをみていただきたいのですが、ちょっと難しいので、かいつまんで要点を書きます。 「耳垢が湿型になるか乾型になるかは、16番染色体上のABCC11配列のたった一つの塩基の違いで決まる。」 「もともと人類は全て湿型であったが、約二万年前の最終氷河期にバイカル湖付近で、あるたった一人の祖先に湿型から乾型の遺伝子変化が起き、その後、乾型遺伝子が世界中に拡散した。」 「このたった一人の変異した遺伝子が、乾型の、耳垢を示す現在の日本人の80 %以上に受け継がれてきている。」 ということなのです。 ということは、乾型の耳垢の人の祖先はたどっていくと2万年前にバイカル湖付近にいたある一人の人物ということで、乾型の耳垢の人同士は、あなたも、そしてあなたもアラスカのエスキモーも南アメリカ大陸のインディオもみんな親戚ということになるわけです。