滲出性中耳炎とは?

痛くないのですが、聞こえの悪くなる中耳炎です。特に就学前のお子さんに多く見られます。鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド増殖症などがあるとなりやすいです。治療は、鼻をきれいにするため、お薬を飲んだり、鼻の治療をしたりします。鼓膜を切開してチューブを入れることもあります。

正常な鼓膜と中耳正常な鼓膜

耳は外耳、中耳、内耳に分けられます。中耳は鼓膜の内側にある空間で、耳小骨の入っている鼓室(こしつ)という部屋と、耳管という上咽頭(鼻と咽との境目)に通じる管などから成ります。
鼓膜に伝わった空気の振動(音)を内耳に伝えるのが、中耳の役割です。
鼓膜は半透明の膜ですから、診察で外耳道側から覗き込むと鼓室の様子がわかるのですが、正常な鼓室は空気で満たされています。

滲出性中耳炎の鼓膜滲出性中耳炎では

鼓室の中の空気が少なくなりますから、鼓膜が凹みます。また、鼓室には滲出液が貯まってきます。滲出液は黄色のことが多く鼓膜も正常に比べて、黄色みがかった暗い色へと変化します。

鼓膜が凹むことと、鼓室に滲出液が貯まることにより聞こえが悪くなります。これは、鼓室の中身が空気から滲出液に置き換わることにより、鼓膜や耳小骨が動きにくくなり、鼓膜の振動がうまく内耳に伝わらなくなるからなのです。難聴の程度は、人の話が少し聞き取りづらくなるぐらいですが、耳のつまった感じも伴います。
風邪を引く度に、急性中耳炎を合併して耳が痛くなることもあります。

原因は?

鼓室は耳管という管で上咽頭とつながっています.上咽頭にある耳管の入り口を耳管咽頭口といいますが、ここから、急性鼻炎や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アデノイド増殖症などによって、炎症を起こしたり、また耳管の内部が粘液などにより塞がってしまうことで、鼓室に空気が入らなくなったり、中耳の粘膜が炎症を起こしたりすると滲出液が貯まります。同時に貯まった滲出液の排泄も滞って発症します。子供はもともと耳管の働きが未熟なので、滲出性中耳炎になりやすい傾向があります。

必要な検査

鼓膜内視鏡検査

内視鏡を使って鼓膜を詳細に観察します。これにより炎症の程度、滲出液の有無、鼓膜の癒着の有無などが分かります。

聴力検査

どれぐらい小さい音まで聞こえるかを、オージオメーターという機械を使って測定します。ただし、3歳から4歳までは通常の聴力検査が出来ません。その場合は、脳波聴検(ABRやASSR)などの他覚的聴力検査を行います。

ティンパノメトリー

鼓膜の響きやすさを測定します。鼓膜にかかる圧力を変化させることにより、鼓膜が凹んでいるのかどうかも分かります。

治療は?

チュービング

鼻炎や副鼻腔炎が原因となっている場合は、その治療をします。具体的には鼻の吸引、ネブライザーを外来で行います。抗アレルギー剤(ジルテック、オノンなど)、粘液溶解剤(ムコダイン)、マクロライド系の抗菌剤(クラリシッド)などの内服治療も行います。
子どもの滲出性中耳炎では、鼻の状態が良くなるにつれて治ることも多いですから、まずは鼻の治療などで3ヶ月程度は様子を見ます。
それで良くならない場合には、鼓膜チューブ留置術などを行います。これは当院の外来で局所麻酔だけでできる場合もありますが、もし恐怖心などでじっとしていられない場合には、病院で全身麻酔で受けていただきます。この場合はたいてい2泊3日程度の入院も必要になります。
大人で、耳閉感などの不快感が強い場合や難聴がある場合には、鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置術などを早めに行う場合もあります。

治療期間は?

小さいお子さんで、しかも貯まっている滲出液が多い場合などは、数ヶ月から数年かかることもあります。その間、鼻汁が多いなどの症状があれば、通院も週1度以上必要なこともありますが、落ち着いていれば月1回程度の経過観察のみで良い場合もあります。

合併症は?

真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎など、治りにくい中耳炎を続発することがあります。

日常注意する点は?

鼻を片側ずつ丁寧にかむようにして、すすらない様に気を付けましょう。水泳はあまり鼻が多い時を除いては問題ありません。